夫を突然亡くした美しい妻の場合?

続・おもしろ聖書エッセイ!For Women

バイブル中の美しい女性達のドラマがコミカルなエッセイに!

夫を突然亡くした美しい妻の場合?

アビガイルは荒野へ

多くの資産を残して、ある日突然!夫が心臓発作で亡くなってしまいました。ほとほと手のやけるケチで粗野な夫でした。でも、妻には少しだけ親切かもしれません。

あなたが、もしも・・・こんな状況に遭遇したならどうなさいますか?『寂しくはなるけど、これからゆっくり余生を過ごそう。子供はいないけど大勢の使用人もいることだし、財産もあり余るほどあるのだから、経済的な心配もないし・・・。』などと考えますか?

今は昔、アビガイルという美しく賢い妻がいました。夫ナバルは、人に対して思いやりもなく吝嗇に欠けた愚か者でしたが、大富豪でした。その夫が、突然の死に見舞われます。それまでの、アビガイルの結婚生活が、どうだったかは、想像を逞しくして推察するしかありません。これは、勝手な憶測です。まあ、おそらくは、結婚したものの次第に夫の本性が明るみに出てきて、ほとほと手に余っていたことでしょう。

それでも『衣食住には、まったく困らないし、愚かな主人にもちょっと堪えていさえすれば、豪勢な暮らしを楽しめる。それに、召使たちや使用人は一生懸命働いてくれるから、自分は好きなことは出来るので居心地良いし、ま、良いかな、これで。』と、考えて夫への嫌悪感を後へ押しやって、過ごしていたのでしょうか。

或いは、『今は、嫌な夫でも、その内には、人間が変わってきて利口になってくれれば・・・わたしは、それまで耐え忍ぼう。』と、思っていたのか。まさか、突如として、夫が亡くなるとは思いもしなかったのか?それとも、常々、何気なく『もし、この夫が死ぬようなことがあれば・・・。』と妄想していたのか?その他にもいろいろ想像できて、面白いですね。おもしろ聖書エッセイですからね。

それまでの日々が、彼女にとってどうだったかは、夫の死後、どんな生き方を選んだのかを知れば、ある程度は、推測できるものと思いますね。興味深いです。

では、先ずは夫が死に至るいきさつからです。これは、後にイスラエルの王となるダビデという人から始まります。王となる可能性のあるダビデは、嫉みに駆られた当時の王サウルに命を狙われ、逃亡者として部下達と共に不毛の荒野で、さすらい生活を余儀なくさせられていました。(ちなみに聖書によるとダビデは非常にハンサムだったようです)

その荒野における逃亡生活の間に、アビガイルの愚かな夫であるナバルの所有地で、彼の多くの家畜を盗賊から守るなどして、親切を示し続けました。ダビデが勝手に、無料のセキュリティを行ってあげていた、という事です。であれば、当然ダビデと部下達としては、報酬として・・・ナバルが、せめて有り余る食物から少しは分けてくれてもいいのではないか、と言うのが心理だったのでしょうね。なにしろ、彼らは食物に事欠いていたわけですし、当時にセキュリティを他に雇えば、ナバルにはそれなりの支払いも必要だったでしょうしね。

それで、収穫のあった頃に、ダビデの手下が出向いてお願いすると、けちで愚かなナバルは「王から逃げてるような奴になど、与えるものなど少しもない!」と高飛車に断るのですよ。(サムエル前書25章)ついでに、ダビデの悪口まで言ってしまいます。何という人間ナバルなんでしょうね。

そこで、多少血の気の多かったダビデは、怒り狂って部下達を引き連れて、ナバルの家の者たちの『皆殺し』を決意したのです。このダビデと言う男性も、ピュアな心の持ち主のようですが、まだ若さのためか、ちょっと短気者ですね。

さて、今や出かけるぞ!というところへ、事情を僕たちから聞いて知ったナバルの妻アビガイルが、大急ぎで沢山の食物を従者と共に携えて、ダビデのもとへ駆けつけます。勿論、お馬鹿な夫には内密に行動を起こしたのですよ。相談したところで、何の解決方法も考えないでしょうからね。彼女は、食物をダビデ達に提供するのみならず、切々とダビデに対して『流血行為』を、何卒、留まるように嘆願します。彼女の巧みで非常にロジカルな話に、ダビデは願いを聞き入れることになるのです。不釣合いにも、ナバルとは大違いの頭脳明晰な賢い妻だったんですね。

そして翌日です。アビガイルが夫ナバルに昨日の出来事『一家皆殺し』の重大な危機を何とか乗り切った件を事後報告として告げるや、ナバルは驚愕の余りに石のように硬直してしまいました。臆病者でもあったのですね。ナバルは、その10日後には発作で死んでしまいます。神が彼を打たれた、とありますから、余程、悪い人間だったのでしょう。死因は、心臓発作であったのかもしれませんね。

さあて、美しいアビガイルはどうするのでしょうか?のんびり余生を楽しむのか?いいえ、予想とは異なりました。なんとナバルが死んだ、と聞き及んだダビデがアビガイルにプロポーズするのですよ。ダビデという人は、当時の風習の影響か否か、何人もの女性を妻にしていきます。案外、彼は美丈夫のこともあって、多情だったのか、それとも、何らかの意味があってのことなのか、それは分かりません。或いは、よほど魅力的な男性だったので、女性のほうから、近づいたものかどうかも、これまた、不明です。

それはさて置き、アビガイルは、このダビデのプロポーズを受け入れるのでしょうか?逃亡生活中でのダビデの二人目の妻になる決心をするのでしょうか?今のところ、悪条件たっぷりのダビデに付いていくのでしょうか?

なんと、彼女はダビデの申し出を受け入れるのです。こういう生き方を選択したアビガイルについてどう思われますか?おそらく、夫の喪の期間を過ぎるとすぐに多事多難を予想できる新たな結婚生活に入るのです。殆どの富と資産を後にして、五人の侍女だけを連れてダビデの一行に加わるのですよ、驚きです。

この選択は、彼女が、人格などの内面を重視する信仰の女性だった、ということでしょうか。それまでナバルとの生活で、夫の人格特性に苦しんでいたのでしょうか?富は、彼女には、それほど魅力がなかったのでしょうね。ほんのちょっとだけ勿体ないですけどね・・・。と、言う訳で、新しい結婚生活での期待感を持ったに違いないですね。

それにしても、彼女は、何を選択してもいろいろな点で恵まれています。なぜなら、まもなく公式にダビデはイスラエルの王となりますからね。つまり、彼女は「王妃」のひとりという立場になるわけです。欲しかったか否かは、別としても、名誉も富も愛も勝ち得るのです。但し、多妻の王、ダビデの妻として生きていく上では、これまでとは異なる悩みも生じたことでしょうが・・・ね。

では、夫を突然亡くした場合!アビガイルの決定は、勇気ある選択と感じますか?或いは資産がもったいないと感じますか?はたまた、自分なら、ゆっくり独身の自由を楽しんだのに、と思いますか?まあ、それは各々違うでしょうね。しかし、このアビガイルの選択も、時にはちょっとだけ脳裏を掠めるだけでも良いので、覚えておきましょうね。

いずれにしても、毎日の営みで迫られる日常の小さな選択から人生の岐路に立ったときの重大な選択に至るまで、人は自分の意思で自由に選択して生きるものですからね。それが、積み重なって、本人の人生を創造するということです。その結果については、アビガイルが自ら負って生きたように、私達も自分の意思で選んだのですから、結果を自ら負って明日を生きねばなりません。どんな選択をしても責任はついて来るのが真実です。全ての結果を自らの責任に出来ると言う覚悟があれば、どの女性も人生の途上で生じる問題に対処できるでしょうね。どんな発言であれ行動であれ、選択の自由には必ず責任が伴う・・それを人間一人一人が理解していればよい訳です。

それにしても、何故アビガイルは最初にナバルのような男性と結婚してしまったのでしょうね。どんな経緯があったのでしょうね。ナバルが死んだ時、どんな感情を抱いたのでしょうね。悲しんだのか、憐れみを感じたのか、或いは内心一瞬は喜んだのか、知る由もありませんが、自分をアビガイルに置き換えていろいろ想像するのも楽しいものです。その日が、突然訪れるかもしれないので、その前に!夫を突然亡くした場合をアビガイルの選択から気づくきがありますように。

written by 徳川悠未