「落穂拾い」に秘められた若き未亡人のその後?

続・おもしろ聖書エッセイ!For Women

バイブル中の美しい女性達のドラマがコミカルなエッセイに!

「落穂拾い」に秘められた若き未亡人のその後?

異国で働いたルツ

「落穂拾い」の画の未亡人は、その後、どうなったのでしょう。 19世紀のフランスの画家ミレー作の「落穂拾い」の情景は、落穂を拾う農民の素朴さと静けさがノスタルジアを私たちの心に呼び覚まします。ご存知のように「落穂拾い」という行為には、貧しいやもめや父なし子の為の福祉を図る律法が後ろ盾になっていました。

土地を持ち、きちんと営める人々に対してはこう述べられていました。要約ですが「地の実りを刈り入れるときは、畑の隅々まで刈り尽くしてはならない。あなたの刈り入れの落穂を拾ってはならない」(レビ記19章)「畑で穀物を刈るとき、もしその一束を畑に置き忘れたならば、それを取りに引き返してはならない」(申命記24章)穀物のみならずブドウ畑についても同じでした。なぜだったのでしょうかね?

「貧しい者、苦しむ者、外国の寄留者、そして孤児と寡婦(未亡人)に、取らせなければならない」と続いています。収穫の取り残し、落ちた穂は、経済的にも立場的にも苦しい人々への無言の援助行為でした。ですから、逆の立場からすれば、落ちた稲穂を拾うということは、当時において恵まれない者であることの証明ですね。

そうした民の中の一人に、刈り入れ人の後ろに付いて行き、小さくなりながらひっそりと落穂を拾う若き未亡人がいました。聖書中で女性名をあげている希少な二つの書のうちの最初の書「ルツ記」の主人公ルツです。

彼女自身は地元のモアブの人でしたが、夫はユダの地の出身でした。彼女は、愛する夫を亡くしてしまいます。未亡人になったわけです。それで、未亡人で姑のナオミが、ルツとルツの亡き夫の兄弟の妻で、同じようにナオミの嫁であるオルパに対して、それぞれが実家へ戻るようにすすめるのです。ナオミ自身は、故郷のユダへひとりで戻ろうとしていました。

さて、嫁である女性たちは、どうするでしょうか?オルパは、泣く泣く実家へ戻ることにしたようですが、ルツは、なんと!見知らぬ地であるユダへと姑について行く事に決めるのです。凄い決断ですね。きっと、未亡人になる前も後も、姑に愛と哀れみを抱き続けていたのでしょう。現代では、余り聞かない美談ですね。

そうして、ユダの地へ行ったものの、ふたりには耕す土地もなく仕事もありません。二人は貧しいため、当時の習慣どおり、「落穂拾い」の取り決めの益に与らねばなりませんでした。年老いた姑には、重労働と見えるこの落穂拾いは、無理と言うものです。それで、姑と自分の食物のために、若き未亡人ルツは、大勢の同年齢の男女たちが刈り入れをしていたであろう畑の片隅で・・彼らの後を追いながら、地面をみつめ落ちているわずかばかりの穂を、必死に拾い続けたのでしょうね。

収穫の数ヶ月にわたる期間を、そのようにして働くわけです。「落穂拾い」は、決して楽な作業ではありませんね。しかし、働く行為そのものは人間に自尊心と充足感を与えるものですから、きっとこの律法はあらゆる角度からして、現代の福祉の有り方に勝るとも、劣らないのではないでしょうかね。

そうではあっても、ルツ自身のその時の感情がどのようなものだったかは、同じ女性として想像にお任せします。きっと、謙遜な気持ちも要求されたことでしょうし、自分が故郷のモアブを後にして姑に付き従ってきたという選択が、果たして『正しかったのだろうか?」と後悔の念を感じる瞬間もあったことでしょう。

それでも、モアブの地での食物のない大変さと比べれば、飢饉に喘ぐ必要はなく、少しでも食物に与れる自分に満足感を抱き、神の律法の規定に感謝していたかもしれませんね。では、ルツはそのようにして姑ナオミへの無私の愛と自らの忍耐で、ただ落穂を拾い続けてくだけで、生涯を終えるのでしょうか?

傍から見ているユダの人々には、そう思われていたことでしょう。中には、一心に働く異国人のルツの姿に、感動していた人々もいたかも知れませんが・・。

そうこうしている内に、彼女にとって、予想だにしなかった人生の転機が訪れます。神の導きなのでしょう・・ルツは、その姑に対する親切と貞節さのために良い評判を得ることになっていきます。落穂を拾うために入ったある畑の地主ボアズという富裕な人の好意を得ます。姑ナオミの法を活用する機転と応援もあり、彼女の人生は大転換していきます。ナオミのように、法のついての知識は、有用ですね。老齢にも拘らず、しっかり生き抜く寛容な情報は得ていたのですから、見上げたものです。

さて、関係するこの三人は、煩雑な律法の規定を経ていきますよ。最終的に、若き未亡人ルツは富んでいる大地主ボアズの妻と、なれるのです。なんという幸運といいますか、普段の営みの真摯な態度が報われた、といいますか、素敵なことですね。やがて、ルツとボアズの間に男の子オベデが産まれるのです。同様に報われた姑ナオミは、血のつながりのないお祖母さんとして、子守を楽しむわけです。

ルツのラッキーは、それだけではありませんでしたよ。ルツはモアブ人の女性でしたが、キリスト・イエスの先祖となるオベデを産んだ女性として、稀に見る特別な祝福をも得たのです。ルツという女性は、おそらく内外共に美しい人だったに違いないですね。異性へのむやみな関心を抱かずに、姑と自分の生活を成り立たせる努力に、励んだ女性でしたね。その貞潔さと無私の愛、忍耐と謙虚さ、辛抱という特質が、幸運への扉を開いたのでしょうね。その後、どんな生活を送ったのでしょうか?その後の記述はありません。が、姑を親切に養い平安を与え続けたと考えることができます。

私たちには「落穂拾い」の法律はありませんが、自分が苦境に直面した時には、別の意味で求められる人格特性が役立ちますね。角度を変えて自分なりに当てはめてみますと、ルツの人生はとても興味深いストーリーでした。

美しい絵画「落穂拾い」の隠された一面を知ると同時に、私達は結果がどうあれ・・・女性の優れた特質は、どんな状況に遭っても「持つ人自身を幸福にする」という喜ばしい教えを享受できます。「落穂拾い」に秘められた若き未亡人ルツの素晴らしいその後でした。今日も全ての女性に幸あれ!

written by 徳川悠未